要件2:建設業の営業所ごとの専任技術者(専技)

営業所ごとの専任技術者とは専技と呼ばれ営業所に常勤する方

営業所ごとの専任技術者(いわゆる専技)の設置の目的は、建設工事についての専門知識を有する技術者の恒常的な技術指導のもとで建設業の営業が行われる体勢を構築することにより、建設工事の請負契約の適正な締結、履行を確保することにあります。
そして専任技術者(専技)の「専任」とは、当該営業所に常勤して専らその職務に従事します。
雇用契約等により事業主体と継続的な関係を有し、休日その他勤務を要しない日を除き、通常の勤務時間中はその営業所に勤務し得るものでなければならないとされています。
法人の場合、取締役等の役職者である必要はありません。
建築士事務所の管理建築士、宅地建物取引業の専任取引主任者等との兼任については、認められます。

※実務経験(一般建設業):許可を受けようとする建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験も含まれる。ただし、単なる工事現場の雑務のみの経験は含まない。
※指導監督的な実務経験(特定建設業):建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任や工事現場監督者のような立場で、工事の技術面を総合的に指導監督した経験。ただし、発注者から直接請け負った建設工事(元請工事)に限る。
※実務経験として認められる設計の経験は、発注者としての設計の経験であり、建築士事務所の設計監理の経験は含まれません。
※指導監督的な実務経験での請負金額は、平成6年12月27日以前であれば3,000万円以上(税込)、昭和59年9月30日以前であれば1,500万円以上(税込)の請負金額でも認められます。
※指定学科は学校教育法によるもの(いわゆる「職業能力開発大学校」等は含まない。)です。
専任技術者(専技)になることができる指定学科に該当するかどうかの判断は、出身校の卒業証明書、履修科目証明書等によって判断されます。

専任技術者(専技)の「専任」とは

「専任」とは「営業所に常勤して専らその職務に従事する」ことをいいます。
雇用契約等により事業主体と継続的な関係を有し、休日等の勤務を要しない日を除き、通常の勤務時間中はその営業所に勤務する者でなければなりません。
次のようなケースは専任とは認められません。

・パートやアルバイトの社員(短期雇用又は勤務時間中の一定時間帯のみの勤務は専任ではない)
・常用大工等の下請作業員(常用は日決め単価での一定期間の雇用であり専任にはなりえない)
・住所が勤務する営業所から著しく遠距離にあり、社会通念上、通勤不可能と考えられる場合
・同一業者の他の営業所の専任技術者になっている場合
・建築士事務所の管理建築士、宅建業の専任取引士等、他の法令によって専任性を要する役職と兼務している場合(同一企業で同一営業所の場合を除く)
・他の建設業者の専任技術者又は配置技術者になっている場合
・個人事業主との兼務や他社の常勤取締役である場合
・衆議院議員、参議院議員、都道府県・市区町村議会の議員
なお、同一営業所内において、2業種以上の技術者を兼ねることはできますが、他の事業所または営業所の技術者と兼ねることはできません。

通勤可能圏外の遠隔地に居住している場合や、他の建設業の営業所の技術者等との兼務を行っている場合は、営業所専任技術者として認めていません。 これは、許可制度を創設した昭和46年当時、契約内容の確認を行い、適正な請負契約を締結するためには、営業所にて常時勤務する必要があったためと考えられます。
技術者不足が懸念される現在、技術者を営業所の業務のみに従事させるのではなく、現場の監理技術者等としても配置するニーズは大きくなっています。WEB会議アプリ、スマートフォン等ICTの普及状況等を踏まえれば、一の営業所専任技術者が、その役割を果たしつつ複数営業所を兼務することは、技術的には可能となっています。2021年12月には、テレワークにより職務に従事する場合も専任要件を満たすことが、建設業許可事務ガイドライン(抄)で明確化されました。
当面の動きとしては、監理技術者・主任技術者については、現場での活用ニーズが大きいことを踏まえ、まずは営業所専任技術者と監理技術者等の兼務を措置することとし、営業所同士の兼務などについては、中期的課題として引き続き検討を行うことが国土交通省より示されています。(2022年3月29日 第3回 適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期))

実務経験年数の取扱い

専任技術者になるための実務経験の期間は、具体的に実務に携わった期間を積み上げて計算します。複数の業種を重複して計算することはできません。
実務経験のみで複数の業種の専任技術者となる場合、実務経験期間の重複は二重に計算できないため、最低でも10年×業種の数の期間が必要ということになります。
同時に2業種を10年経験してきたとしても、専任技術者となるにはどちらか1業種しか選べず、別の業種の専任技術者となるにはさらに10年(計20年)の経験が必要です。
(例:平成21年から同30年までの10年間、とび・土工・コンクリート工事と塗装工事の両方の実務経験があったとしても、どちらか一方しか認められません。)
実務経験での専任技術者の経験年数の確認は、1年を12か月として必要年数分の確認資料(実務経験当時の常勤性及び経験内容を確認するための資料)が求められます。
つまり10年の実務経験を申請する場合には、通算120か月以上の工期があることを意味します。

個別の法律により、特定の資格がないと実務経験として認められない業種があります。資格がなければ従事できない工事に無資格で従事していた経験は、実務経験としては認められません。
・電気工事業、消防施設工事業
 電気工事士法、消防法等により電気工事士免状及び消防設備士免状等の交付を受けた者でなければ工事に直接従事できないため、免状を取得してからを経験期間に算入します。
・解体工事業
 解体工事業を営もうとする者(元請・下請全て)は、建設リサイクル法(平成13年5月30日)施行後は、軽微な建設工事であっても同法に基づく都道府県知事への登録義務があります。(土木工事業、建築工事業及びとび・土工工事業に係る建設業の許可を受けた者は登録しなくても解体工事が可能。)そのため、土木工事業、建築工事業、若しくはとび・土工事業許可又は建設リサイクル法に基づく解体工事業登録で請け負ったものに限り、経験期間として算入します。

複数業種にかかる実務経験の特例

一般建設業の営業所専任技術者の要件を実務経験だけで満たそうとする場合、その業種に関して「10年以上の経験」が必要です。

もし複数の業種に関して実務経験がある場合は、実務経験の期間の短縮や振替が認める特例があります。
例えば建築工事業の経験5年、大工工事業の経験8年の場合、通常では大工工事業の営業所専任技術者の要件を満たしません。
しかし特例「許可を受けようとする専門工事の実務経験が8年以上 + 一式工事の実務経験を4年以上」あれば、専門工事の専任技術者になることができます。(大工工事業の専任技術者となることができます。)
また実務経験は過去のどのタイミングの経験でも構いません。
今回建設業許可を申請する会社の経験である必要はなく、前職や前々職の経験でも問題ありません。
また、1社だけでの経験である必要はなく、複数の会社での経験を通算して10年(もしくは3年や5年)あれば問題ありません。

専任技術者は現場に出られないのか

営業所の専任技術者(専技)は、営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められています。
原則、現場の配置技術者(主任技術者、監理技術者)になることができません。
ただし「現場と営業所が近接している」、「公共性のある工作物に関する重要な工事ではない」など以下の要件を全て満たす場合は、営業所における専任の技術者は、当該工事の専任を要しな範囲で現場に出ることができます。
(平成15年4月21日付国総建第18号『営業所における専任の技術者の取扱いについて』)
①当該営業所で請負契約を締結した建設工事で
②当該営業所が職務を適正に遂行できる程度近接した工事現場で、当該営業所と常時連絡が取れる状態であり(工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度であること)
③所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
※公共性のある工作物に関する重要な工事
 民間で建てる自己居住用の戸建住宅以外の建設工事で3,500万円(建築一式工事の場合7,000万円)以上のものが該当します。
一人親方が建設業許可を受ける場合、自身が経営業務の管理責任者であり、かつ、専任技術者でもあるという形で申請することが多いと思われますので、事前にしっかり確認されることをお勧めします。

名義貸し等の申請は厳禁

所定の要件を満たし許可が下りた後、専任技術者(専技)を務める方の急な退職・離職などで、継続が難しくなってしまった場合、要件を満たす経験者を雇い入れることになります。場合によっては、仲の良い同業者が協力してくれることもあるかと思います。しかし専任技術者は、実際に業務に従事することが必要なので、名義貸し等の申請は厳禁です。虚偽の許可申請は重大な建設業法違反です。許可の取消処分はもちろん「3年以下の懲役又は300万円未満の罰金」(情状により併科あり)の対象となるほか、法人に対しても「1億円以下の罰金刑」が科されるなどの両罰規定があります。そして、以後5年間許可を受けることが禁止されます。許可の要件に関する役員の交代などの変更が生じた場合、一部を除いて変更から2週間以内にその内容について、届出をしなければならないこととなっています(建設業法施行規則第7条の2)。
建設業許可を取得する際には、こうした不測の事態に備え、経営の適正性を保つよう候補となる役員を予め決めておくことはとても大切です。経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものの基準は、会社の役員である事が要件の一つですので、予め役員を追加するなどの登記も検討しておきます。

名義貸しにならないため、以下のような注意が必要になります。
・社会保険等に加入し、常勤として勤務。
・許可取得後や変更届提出後も、継続して常勤で業務に従事。
・他社で経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)など、法令で専任性のある役職についていないことが必要。
・経営業務の管理責任者であれば、商業登記簿に役員として登記。(個人事業は支配人として登記)
・他社の代表取締役は、厳しい要件を満たさなければ認められない。
経営業務の管理責任者が交代する場合は、前任者と後任者との間で在職が継続しなければ、建設業許可を廃業することになります。一方、専任技術者(専技)の交代は、経営業務の管理責任者(経管)とは違い役員である必要はありません。それでも前任者がいなくなる前には変更手続きを終わらせることが望ましいです。許可取得後や変更届提出後に常勤として勤務していないと判断されれば、虚偽記載として罰則の対象になり、非常に思い罰を受けることになります。

第1種電気工事士の実務経験の年数が「3年以上」に短縮

専任技術者になるには、実務経験の年数を積み上げるよりも、資格取得によるところが最も簡単です。近年は建設業界では技術者不足が叫ばれていますが、それに対して資格取得の実務経験の年数を短縮するなど、動きも各業界であります。
たとえば、工事需要が減少する保守的な予想をした場合でも、第1種電気工事士は、高齢の第1種電気工事士の退職のため、が2020年付近から人材不足が生じる可能性があるとの資料がありました。(経済産業省 商務流通保安グループ)これまでは、第1種電気工事士の免状取得には、筆記と技能試験の合格と学・高専の電気学科卒で3年以上、それ以外の場合は5年以上と、電気工事に関する一定の実務経験が必要でした。そこで、経済産業省は、資格保有者などに対して実態調査(電気保安人材を巡る課題の検討状況について 産業保安グループ電力安全課)を行い、電気保安上の問題がないと判断、第1種電気工事士の免状取得に必要な実務経験を、卒業した学校・学科を問わず、一律に「3年以上」に見直すこととしました。この電気工事士法施行規則第2条の4の改正により、令和3年4月1日以降に免状交付申請を行う場合、第1種電気工事士試験の合格日に関わらず、合格された全ての方の必要な実務経験が3年以上に短縮されました。
(宮城県の場合)
1. 第1種電気工事士試験に合格した方(合格)
 ①大学又は高等専門学校において電気工学に関する課程を修めて卒業した方 →3年以上の実務経験が必要
 ※電気理論、電気計測、電気機器、電気材料、送配電、製図(配線図を含むものに限る。)、電気法規を取得していること(卒業証明書と単位取得証明書を添付)。
 ②その他の方 →令和3年4月1日からは3年以上に短縮
 ※①②とも実務経験は、試験合格以前でも有効です。
2. 高圧電気工事技術者又は電気主任技術者(認定)
 ①高圧電気工事技術者 →試験合格後3年以上の実務経験が必要
 ②電気主任技術者 →免状取得後5年以上の実務経験が必要
 ※①②いずれも居住地を所轄する(住民登録している)都道府県へ申請します。

なお、実務経験の内容について、どのような工事が実務経験として認められるかについて、どうやら申請先の自治体によって、詳細の案内が意外と無かったりするようです。(宮城県では案内しています。「実務経験証明書について(認定)」)
なお、電気主任技術者免状所有者が、試験合格を経ずに「認定」として申請する場合に必要な実務経験5年以上の内容とは細かな部分が違います。
ご注意ください。


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